嵌め込み故郷〖阿部亮太郎〗東京佼成ウインドオーケストラ【吹奏楽】

嵌め込み故郷〖阿部亮太郎〗東京佼成ウインドオーケストラ【吹奏楽】

作曲者が東京芸術大学大学院在学中の1987年に作曲したのがこの作品で、作曲者は
次のようにこの意味や内容を説明しています。
『私の感じている“故郷”は、自分の意識(感動や意味等)を生み出している母胎の
ようなものです。私は常に自分の音に、そのような故郷への願望を感じてきました。
しかし現実には、言語や貨幣などのような不自由な枠に縛られなければ何も思うこと
はできません。音楽も、そのような不自由な枠であると思います。私は、自分の故郷
への願望(自分の音)が、不自由な枠(音楽言語の構造)に嵌め込まれていくのを見
届けることで、架空の故郷と、故郷の架空性がクローズアップできるのではないかと
思い、筆を進めました。』

 この曲の特徴は、6人の奏者による多彩な打楽器の使用とピアノが重要パートをしめ
ている点(特に曲のはじめや終わりで)があげられます。当然曲は現代的な手法で書
かれ、管楽器のいろいろな組み合わせによる変化に富んだ音色がきかれるのも特徴です。
 作曲者は“故郷”をカリキドスコープ(万華鏡)を通して見ながら、刻々とまた一
瞬毎にかわる姿を私達に音を使って見せてくれるように見えます。
 曲は、激しいティンパニーのリズムによる8小節の序奏ではじまり、ヴァイブの響き
の中からピアノが思い出や憧れを思わせるポツン、ポツンとしたメロディを奏で、バ
ンドがリズムを刻み込みます。ホルンや打楽音も激しく動いた後、次の6/8拍子のや
や静かな部分に入り、長く吹き伸ばされる管楽器の音に打楽器やピアノが絡まり高ま
ります。
 次にチャイムの一撃がまた違った風景を導き出し、サクソフォーンとホルンの静か
な美しいメロディにと移ります。それが金管のフェルマータで高まると木管やゴング
の激しい動きにと変わります。速度を早めて打楽昔の連打の中からピッコロの高鳴り、
テューバ、ホルン、ピアノが絡み合い大きなクライマックスを作った後、音楽はハー
モニツクでかつ金管を主体としたメロディックなクライマックスを作ります。その後、
ピアノと木管が風変わりなサウンドを作り、サクソフォーンのメランコリックなソロ
がクラリネットと共に静かに響き、ミュートを付けたトランペットに導かれあたたか
な金管のハーモニーとなり、木管の吹き伸ばしとピアノと打楽器の残り惜しげな呟き
の中に、金管がフェルマー夕で吹き伸ばし、鍵盤打楽器とピアノのひそやかなサウン
ドで静かに曲を閉じます。本当に万華鏡の変化を見るような自由で幻想的な世界です。

 作曲者の阿部氏は、1962年東京に生まれ、東京芸術大学作曲科から同大学院音楽研
究科作曲専攻を1989年に終了した若手の作曲家で、この曲を作曲する前年には日本交
響楽振興財団募集の作曲賞にも入選しています。現在は、上越教育大学助手として勤
務されています。

コメント